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書家
田坂州代
都バスの手書き張り紙

都バスの車内で目を惹かれた「はりがみ」。

「お願いです!」という乗務員さん達の切実な気持が伝わってきます。そうかあ、乗務員さん達は私たち乗客の行動に、内心ハラハラしながら運転していらしたのですね。

2枚の張り紙は、筆跡から異なる人物が書いたと思われますが、どちらもあい通ずる訴求力を感じます。

そして、これをワープロ処理せず、
「毛筆で手書きにしよう、しなくちゃ」という心理がはたらいたという点にも感慨を覚えます。

訴えたい気持の強さがワープロ文字では支えきれなかったのです。

IT全盛の現代であっても毛筆文化圏のDNAが脈々と生きている証拠です。

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正直、お習字的目線から見れば、つっこみどころはいくつもあります。
例えば点画の組み合わせ方がいびつであったり、
「しっかり」が「しっかソ」のような形だったり等々。
でも、
それを上まわる「訴え感」に溢れた張り紙です。

誰が書いたのかなあ、
ひょっとして、わざと子どもに書かせたものかも。
しかし、それにしては線の太さが細いまま安定しているし、
文字の大きさや中心線がほぼ揃っています。
ハネやハライがちゃんとしている部分もあります。
やはり大人の人かしら。
などと想像が広がります。

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なによりも
「上手下手以前に、気持が伝わってくることの大切さ」

私たち玄人は、こうした筆跡を拝見することで
あらためてこのことを肝に銘じるのです。

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都バスの手書き張り紙