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書家
田坂州代
閑吟集〇五八

閑吟集(全三一一首)を毎日ひとつづつアップしてます。
毎回即興にてご容赦。

中世のいきいきとした歌謡集「閑吟集」は、相手を想わずにはいられない人間の機微、人生の真髄を突くひと言、そのおおらかさについ笑みがこぼれるおちゃめで色っぽい歌まで、多様性に富んだ歌が並んでおり、書いていて楽しいです。(田坂州代)

閑吟集2-058s

閑吟集 〇五八/三一一 閑吟集58
夏の夜を 寝ぬに明けぬと言ひ置きし 人は物をや思はざりけん 麦搗く里の名には 都忍ぶの里の名 あらよしなの涙やなう 逢はで浮き名の名取川 川音も杵の音も いづれとも覚えず 有明の里の子規(ほととぎす) 郭公(ほととぎす)聞かんとて杵を休めたり 陸奥(みちのく)には 武隈(たけくま)の松の葉や 末の松山 千賀(ちか)の塩釜 千賀の塩釜 衣の里や壷の石碑(いしぶみ) 外の浜風 外の浜風 更け行く月に嘯(うそぶ)く いとど短き夏の夜の 月入る山も恨めしや いざさし置きて眺めんや いざさし置きて眺めんや